8. 大スパン構造物と災害に関する研究
8-1. 大地震時の大スパン構造物の被害調査
大スパン構造物は大規模集客施設として用いられることが多く,また地震後の避難場所としても重要な役割を果たす。
1995年の阪神大震災の折に行った大スパン構造物の被害調査の結果,以下のようなことが明らかになった。
- 大スパン構造物は軽量構造物として設計される場合が多く,地震時の構造的被害は少ない。
- プレキャスト・コンクリート梁構造の屋根は支承部の設計により大変危険な崩壊を生じる場合がある。
- 鉄骨構造の壁面ブレース,屋根面ブレースの破断、座屈が生じる場合があるが崩壊には至っていない。
- 鉄筋コンクリート構造に鉄骨屋根構造が載る部分の支承部の被りコンクリートの剥落が多く見られる。
- 立体トラス部材の破断・座屈が散見されたが大きな崩壊には至っていない。
- 通常は構造材とは見なされない,天井材や懸垂設備の落下が多数見られた。
とくに大スパン構造物の場合,天井が頭上高く設定され、面積も広大なため,天井材や設備の落下は大変危険である。
大規模集客施設の安全性、避難場所の確保、という観点から今後最も注意、改善が求められる点である。
また、構造材がいかに健全な場合でも、非構造材の被災により復旧に必要な足場費用、
長期にわたるイベントの中止などに伴う経済的な損失が大きい点にも留意する必要がある。