2. 空間構造システムの開発
2-4. Tensegrity 構造の実用化,建設と調査
テンセグリティをユニット化してシステムトラスのように集積して組み立てる、というのが従来多くのエンジニアが発想したことであった。
しかし、テンセグリティは単体でも張力バランスが微妙なので、これを多数寄せ集めることは、施工的に困難が多く、構造的メリットは薄くなる。
我々が開発した張力安定トラスシステム(研究テーマ2-1)ではテンセグリティと立体トラスの長所を併せ持たせることでユニット化を成功させた。
本研究では構造を大胆に見せるために、テンセグリティの単体をダイナミックに用いることとした。
テンセグリティの設計では,張力構造特有の複雑な非線形挙動の解析に加え,施工時の張力導入計画が大変重要となる。
自己釣り合い状態は不静定次数に対応した数だけ存在するが、これを適切に制御することができなければテンセグリティは実現しない。
設計時にここまで見通していないと施工時に破綻を来たすことになる。
今回の建設においては,さらに張力導入作業を油圧ジャッキ等の器具に頼らず、人力のみにより行う方法を提案し、最大張力22トンの導入に成功している。
風時に膜屋根に生じる大きな変形は,テンセグリティ頂部から吊り上げた束の下端の滑動回転で吸収する設計になっている。
膜面に生じる歪は川口研究室において開発中のPVDFによる歪ゲージを用いて観測を行っている。